NRF APAC – ② Expo, リテールAI研究会セッション編

スマホの方は、横向きで見ていただくと見やすくなります☆

今回は先日の6月11日~14日にシンガポールで開催された
【NRF Retail’s Big Show APAC】のレポート第2弾をお届けいたします。

Expoで気になったテクノロジーと
メンバーの一員として参加した【リテールAI研究会】のセッションで
学習した内容を皆様にレポートいたします。

EXPOからテクノロジーを、研究会では賢人から可能性を学ぶ。

EXPOブースから学ぶ

アジアを中心に約7000人が来場した今回のイベント。
200を超えるブースをすべて回ってみたところ、主に以下の4つのテクノロジーに集約されました。
① AI
② Payment
③ RFID
④ サイネージ
単なる技術や情報提供の展示ではなく、①~④いずれかをミックスしたコンセプトを体験させていたブースは人だかりが多くできていたのが興味深かったです。

その中から、2つほど面白かったテクノロジーをご紹介いたします。

SONY
・什器(商品を販売するための棚)にAIカメラを向け、その映像で店頭の在庫数量管理や顧客トラッキングを解析。
・そのデータを品出しや物流まで通貫させ、省人化とミス削減させます。
・かつ人流のプロフィールをマーケティングやマーチャンダイシングにも展開できれば、セールやイベント、棚割りや商品開発(特にPB商品など)といった”攻め”に活用できます。

シンガポールのスタートアップブースにあったVRの会社。

自身をサイネージに投影し、スワイプしながら商品を試着できます。トップスからシューズまで様々なものを疑似体験でき、ひとりファッションショーが楽しめます。

買物客は試着室を何度も往復する必要もありませんし、ご婦人のお買い物に付き合わされたご主人が退屈する暇もこれでもうなくなりますね。

そして小売やメーカーとっては顧客の嗜好データが容易に得られるので、売手と買手の双方にとってよいソリューションでした。既にアパレル数社での採用が決まっている?採用済?だとか。

・ 価格、在庫、物流といったマスター連携
・ 商品開発や店舗開発に、顧客属性や閲覧履歴などのデータを活用
・ SNS連携やOMOによる販売促進
・ 本人と似たプロフィールの写真を当人と比較や、AIによる他の商品のコーディネート提案によるアップセルなど・・・
実運用で実出来そうなことは無限大ですね。

レスポンスが非常に快適なのが驚きました。HW自体は高額でしょうが、買物客が得られる体験価値と、売手が得られるデータにも価値があるでしょうから、値打ちがありますね。

リテール AI 研究会 から学ぶ

今回のNRF APAC 2024は、リテールAI 研究会のメンバーとして参加させていただきました。
2日目に、現地特別セミナーとして、以下のアジェンダから様々な可能性について学習いたしました。
—————————————–
・ オープニングセッション(日本オムニチャネル協会様)
・ アジアAIトレンド (マイクロソフト様)
・ リテールAIハッカソン開催(今村商事様)
・ シンガポール在住者からみたNRF-APAC (ICMG Digita様)
—————————————–

その中でも特に印象に残った2つのプレゼン一部を共有いたします。

ICMG Digital : シンガポール在住者視点から

シンガポール在住のICMG羽田様より、シンガポールの歴史、置かれている環境や、AIへの取組などをスピーチいただきました。小職としては羽田様のプレゼンが、このNRF APAC全体を通じて一番 ”刺さり” ました。

シンガポールについて
・ 面積は東京23区ほど
・ 1965年にマレーシアから分離独立
・ 人口約564万人(うち157万人が外国人)
・ 食料自給率は10%未満(日本は37%)
・ 公用語は4つ(英語・中国語・マレー語・タミル語)
・ 2030年には4人に1人が65歳以上になる見込
・ 1人当たりGDP世界5位(アジア1位)
・ スタートアップ社数 5,000社以上

羽田様からいくつか共有いただいたケーススタディの中でも、特に興味深かった事例を共有いたします。

【Quikbot】 – 建物内のFinal Mileを届けるロボット

配達員不足や配達効率をカバーするAIソリューションです。最近の通常の高級分譲マンションならば、置き配スペースが配備されいるでしょうが、HDB(国が管理する公営住宅)への配備は難しいです。

そこで、Quikbotの出番です。
小宅までロボットが配送。エレベーターメーカーとも連携しており、ロボットが自働でエレベーターを制御し、小宅まで配送します。

羽田様から学んだシンガポールのIT(AI)の取組からは、以下が非常に勉強になりました。
① 国が社会課題に優先順位をつけ、それに応じて資本投下、ROIまでのモニターを行う
② 担当となったソリューションベンダーは責任を持ち、その使命を全うする
③ プロジェクトの目的達成のために、企業間で柔軟に連携する

なかでも①の、【国が社会課題に優先順位をつけ、それに応じて資本投下、ROIまでのモニターを行う】に感動しました。
日本では、経済産業省が実施しているベンチャー・スタートアップ支援への手厚い財務サポート(税制含む)があります。
・ 採択は、応募のプレゼンテーションの優劣で決め
・ どの国の会社かは重要視せず
・ エンジェルのはずなのに、株やIPといったものには関与せず
・ そして充分なROIのモニターは行いません

あくまでも若手、女性、外国人に、”起業⇒IPO” をさせるのが目的であって、【国が投資したものを”株主”として将来リターンを得る。もしくはIPの一部を国のものとして社会課題に展開する。】というデザインにはなっていない事が、シンガポールとの大きな違いです。これでは世論からは、ばら撒きと揶揄されても仕方がないのかもしれません。

長期政権のシンガポールと、足の引っ張り合いで4年間を繰り返す日本では実行力に差が出るのも理由としてあるでしょうが、シンガポール共和国のドライブ力の違いを肌で感じました。

マイクロソフトコーポレーション

マイクロソフト藤井様より、
*AZURE Chat GPT4.0をAIを使ったあたらしい全くあたらしい形のショッピングのデモを見せていただきました。
*OpenAIが開発し自然言語処理モデルであるChatGPTを安全に活用することができる、クラウドベースのAIサービスAPIの一つです。

以下のビデオの簡単なストーリーを共有いたします。
急に今夜ハイキングに行くことになったセスさん。Contosoアウトドア店に電話して、AI 販売員に、”今持っているハイキングサンダルで今夜のハイキングは問題無いか?”などを質問します。するとそれはやめた方がいい。と、AI販売員。時間が無いので最適なものを提案してくれ。と、セス。最適なものをチョイスしそれをカートに入れるAI販売員。最後はお互いスペイン語で挨拶を交わします。

チャットボットから、ここまで進化したChat GPT。余計な通話料金を取られた上に、延々と待たされるコールセンターや、シンプルなものであれば対面販売でも活用できそうです。

編集後記

どこもかしこもAI。猫も杓子もAI。
AIの展示が非常に多かったのが印象です。”Artificial Intelligence – 人工知能” は、【目的】ではなく、あくまでも人間が暮らすうえでの補助をしてくれる【道具のひとつ】と考えております。

つまり、AIを利用する大前提は、『AIを活用して、課題の解決や業務プロセスをどう改善するか。』となります。

特に日本の多くの小売業は、【手段】が【目的】となっているケースが多いような気がします。
例えば、≪販売を上げたいから、AIを導入する。≫ のと、≪AIを最大活用し販売員がより接客に集中できる環境を整備し、顧客ロイヤリティを最大化する。≫ では、同義に見えるかもしれませんが、奥行きが異なります。

『自社の課題とその原因を正しく理解していない経営者や担当者が、はやりのAIパッケージを導入してもベンダーのカモにされるのがオチです。』 それは悩んでいるときに占いに行くようなものです。(ストレートな表現で気を悪くされた方がいらっしゃれば、お許しください。)

国がドライブする力、経営者の現場を知ろうとする姿勢や文化、担当者の能力・・・
国も、会社も、部も、課も、だれかに『丸投げ』では成功は到底難しく、”FAST TRACK OF SUCCESS – 成功を最優先” させるためには、『無知の知』を全員が探求していくことにあるのだなぁ・・などと、この3日間の回想をしながら、広い展示会場を後にしました。

そして、弊社MSGがこれから向かうべき方向についても深く議論できた、充実したイベント参加でした。

NRF APAC レポート最終回となる次回は、
番外編として 『シンガポールのグルメ紀行』をお伝えします。

お楽しみに☆

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