NRF Retail’s Big Show APAC – ①キーノート編

スマホの方は、横向きで見ていただくと見やすくなります☆

NRF(National Retail Federation) は、ワシントンD.C.に本部を置く世界最大の小売業界団体です。
小売業向け最先端のテクノロジーの大規模トレードショウである
”NRF Retail’s Big Show” を、毎年1月にアメリカ・ニューヨークで開催します。

1月のニューヨークでのNRFには参加できませんでしたが、
先日シンガポールで開催された『NRF Retail’s Big Show Asia Pacific』に、
MSG代表の渋谷とわたくし髙橋が参加してきました。
その模様を3回に渡ってレポートいたします。

「FAST TRACK YOUR SUCCESS」

イベント会場は、シンガポールのあの有名な ”Marina Bay Sands” (通称 MBS) 横にあるコンベンションセンターです。
ホテル、モール、レストラン街からカジノまである非常に大きな施設です。

登録者7000名以上、200以上のブース、60を超えるキーノートセッションが、6月11日~14日の3日間に渡って開催されました。
テーマは、”FAST TRACK YOUR SUCCESS” —> ”成功を、最優先に。”といったニュアンスでしょうか。
① キーノートでは様々なケーススタディを、
② Expoでは多くのテクノロジーを、
③ そして今回メンバーの一員として参加した【リテールAI研究会】のセッションでは、日本、シンガポールでの様々なAI活用の取組を学習してまいりました。

本日は、上記 ①のキーノートで為になった内容の一部を、皆様にお届けいたします。

Innovation is Advertising

「Innovation is Advertising」

直訳すると、”技術革新は宣伝塔である。”となります。
いまいちピンときませんね。
意訳すると、『新しいアイディア実践の裏付けのある技術革新は、強力なマーケティングツールとして武器になる。』でしょうか。

1日目のキーノートで非常に興味深かったのが、左の紳士、Christopher Thomas-Moore氏(通称CTM) によるスピーチです。CTMさんは、Domino’s PizzaでCDOを担当されています。

正直、”ピザ屋さんのイノベーションなんて、配達アプリの開発くらいでは?”と、少しばかり斜に構えていた自分が恥ずかしいです。その反省理由については後述いたします。

その前に、すこしだけ昔話を。

私がアメリカ・ニューヨークに住んでいた頃、一番長くしたアルバイトがメキシコ料理のデリバリーでした。
住んでいたアパートの1階にはDomino’sがありましたが、メキシカンか迷った挙句、時給が少し多かったのと賄いが美味しかったことを理由に、メキシカンを選びました。
シフトは夜6時から深夜まで、車は自分の車、駐禁やガソリンは自腹、収入は時給とチップという、まさにアメリカン資本主義の典型的な労働条件でした。
”来るついでに、コンビニによってビールやタバコも買ってこい。” などのカスタムリクエストも多くありました・・・
深夜のブロンクスでタコスだナチョスを配達する日本人という、ミスマッチ満載なアルバイト生活でした。 

600ドル(当時1ドル100円前後)で購入したそんな私の愛車 ≪1978年製のポンティアック・グランプリ≫は、スピードメーターもガスゲージも作動せず(今何キロで走っているのか、あと何キロ走れるのかわからない)、極寒のニューヨークではエンジンがからず(2年目に裏技を発見した)、ブロードウェイでアクセルを吹かしたら、パイプハンガーで止めていたマフラーが爆音とともにタイムズスクエアで落下したり、はたまたものすごいトルクでホイルスピンするが、120キロ(推定速度)くらいまでしか出ない、愛くるしくも、常にスリリングな車でした。

そんなグランプリは、帰国時にお隣さんに100ドルで売りました。
車が自転車より安い。それもそのはず。そもそも国や町の作りが大きく違うからです。
日本の様に近所のスーパーに今夜の食材を自転車で買いに行くのではなく、週に1度トラックやSUVを1時間走らせスーパーに1週間分を買い出しに行き、キッチンとガレージにある大きな3つの冷蔵庫をパンパンにする(都市部除く)。どこに行くのも車、郊外だと歩道を歩いているはほとんど見ません、ハンバーガーもATMもドライブスルー、6車線あってもなぜか渋滞。と、圧倒的な車社会です。

話が長くなりました。
そんな車社会のアメリカにおけるDomino’sのリアル店舗での注文は、2割前後とのこと。おそらくその2割の80%以上は、ニューヨーク、D.C、ボストンといった”地下鉄のある” 沿岸大都市部と推測します。つまりアメリカ地図のほとんどのエリアがオンラインでの注文となります。
対面販売がほとんどなく、注文のほとんどはオンライン・・・
そんな市場で商品を売るなら、皆さんならどう差別化して成長させますか。
そのヒントの一部を、CTMさんがケーススタディを交えながら話してくださいました。

これからの顧客ロイヤリティ向上とは・・・

Domino’sが昨年ローンチした、ピンポイントデリバリーというサービスです。
小生の長い説明は一旦休憩しますので、CM動画をご覧ください。

いかがでしょうか。

Google Map上でピンを立てたところに商品をお届けします。(おそらく)前払いですので、未払いやいたずらのリスクは最小化できます。
しかしこれは、日本にもある ”現在地にお届け”に似たサービスです。
そんなに驚きもせず、 ”そんなに上空からやと、ピザが冷めるやん。”とか、”その風圧やと、スマホ飛ばされるやろ。”とか、”あの子ら、ぜったいに寒いやろ!” などと心の中でツッコんでました。

しかし、もし仮にこの配達員がドローンならどうでしょうか? 印象も意味合いも変わってきますよね。
もしかしたら、ピンポイント・デリバリーサービスのVersion2.0は、ドローンかもしれませんね。
そう考えると、少し不安もありますが、ワクワクしますね。


ここでもう一つ動画をご紹介します。

いかがでしょうか。

もしあなたにトラブルが起こったら、【応援ピザ】をプレゼントします。という内容です。
なんとこのキャンペーン期間中は、売上高が2.8%増加し、またDomino’sアプリ新規会員数も大幅に増加したとのことでした。

顧客数とロイヤリティ増加の一因となったCTMさん。
彼がが登壇中に語っていた、成功のために必要な7つのポイント+a(姿勢やマインドセット)を共有いたします。
(筆者意訳)

1. Embrace revolution – 変化を受け売れる(利用する)
時代の変化に抗うのではなくどう利用するか。柔道の技のように、他で生まれて自分に向かってくるエネルギーを、いかに有利になるように利用するか。

2. Practice uncommon honesty – 批判を受け入れる
どんな批判も素直に受け入れ、自社のプラスに変えていくか。

3. Define your ‘why’ – 【やる理由】の追求
今やろうとしていること(すでに行っていること)は、自社と顧客にとって有益なものなのかどうか。もし有益でないのであれば、やめたほうがよい。

4. Take bold action – 大胆にしかける
どうせやるなら大胆に。しかも誰よりも早く(速く)。

5. Challenge everything – 真剣に挑戦する
現状打破に挑み続けると、現在のシステムとプロセスの課題解決への道筋が見えてくる。

6. Get Innovation-Ready – いつでもイノベーションをスタートできる環境配備
イノベーションを迅速に進めるならば、アジャイル開発、適切な人材、開発プロセス、資本が揃っているのが望ましい。

7. Innovation is ‘Advertising’. – イノベーションは、宣伝ツールである
イノベーションは、自社ブランドの有効な宣伝ツールとなります。イノベーションは、口コミで伝播していく。

8. Work in Progress – 終わりのない旅
成功したら、成功体験が生まれる。しかしその成功体験を過信しすぎると油断が生まれ、大きなリスクへとつながる。
成功したら、またあたらしいチャレンジ。ビジネスもイノベーションは終わりなき旅なのです。

1日目後記

これからの顧客ロイヤリティの向上には
これまでの【信頼】や【品質】に加え
おもしろさ・ユニークさ【便利さ・快適さ】
重要な要素になっていくことを強く感じました。

そしてその【おもしろさ・ユニークさ】や【便利さ・快適さ】の創出を
イノベーションが支援し
”サービスを提供する側” と “それを受ける側”の距離を短くさせることにより
マーケティングは進化してくのだなぁ。
と、肌身で感じました。

次回のレポートは、EXPOのブースと
リテールAI研究会のセッションで学んだ内容をお届けいたします。

お楽しみに☆

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